3/5 小さな畔のダイヤモンド

ふもとっぱらのダイヤモンド富士

前日の撮影に続いて、翌朝のダイヤモンド富士を狙う形でスケジュールを組みました。
どちらも同じ朝霧高原なので、移動コストが少なくて済みます。

そもそも、「ダイヤモンド富士」というテーマは、捉え方によっていろいろに考えることができます。
写真歴が浅いうちは「神秘的な光景」「貴重な現象」と思い、非常に魅力ある被写体です。

ところが写真を長くやっていると、「快晴は簡単」「毎日どこかで撮れる」と思うようになります。
「笠雲」などの特殊な条件や、「真っ赤な朝焼け」などの難しい条件に比べると、
快晴になる確率は高く、「いつでも撮影できる」と思うようになります。

ちょうど前日の撮影でご一緒した方とも話ましたが、「ダイヤはいつでも撮れるから!」と正にこのことを言っていました。

私も以前はそう思っていたのですが、最近は考え方が変わってきました。
確かに笠雲や朝焼けに比べると快晴の確率は高いですが、「狙ったその日に快晴になる」という条件は、難しいのです。

ダイヤモンド富士は「毎日どこかで見られる」のは事実ですが、「ある1地点において見られる日」はおおよそ年に2回だけです。

そう思うと、実は狙ったその日にダイヤモンド富士を撮るのはとても難しいことなのかもしれません。
このような考えから、去年は田貫湖のダイヤモンド富士に力を入れるなど、行動パターンも変化してきました。

また、近年ではカメラマンの増加などに伴い「場所取り」の難しさも出てきています。
仕方ないことではあるのですが、なんとも切実で重要な問題でもあります。


ということで…

いつになく気持ちが高まってきます。「とても難しい撮影なんだ」と気を引き締めます。

まずは「場所取り」問題。
田貫湖のように数百人のカメラマンが撮影できる場所とは違い、今回は「池」なので非常にポイントが狭い。
立ち位置が1メートルずれれば全く別の写真になることが予想されます。

これは作品の完成度に大きな影響を及ぼす死活問題!
のんびりパール富士など撮影してないで早めに移動するべきだったかと、妙に焦りました。

コンビニで食事を買い込んで現地に向かうと、ギリギリの4番手。いや~まだ18時過ぎですよ?
考えることは皆同じか。恐ろしい場所取り争い。
なんだかもう怖くなってきます。

さらに2本目の三脚を用意してもう一度池に戻ると、一気に3人ほどのカメラマンが現れて、
もうベストポジションには10本ほどの三脚が並んでしまいました。前日の19時前に定員オーバー?ほんとに怖いです。

結果から見れば、あと5分到着が遅れていたら、ベストポジションは確保できなかったことになります。
もうこんなにヒヤヒヤしたくないです。

前夜から翌朝までの「キャンプ料金」ということで、2000円を支払ってキャンプ場にINしました。
朝を待ちます。

到着時、既に上空に雲が漂っており、月とのコラボレーションで面白い光景になりました。
ふもとっぱらの夜景と富士山

月はどんどん高度を上げていくし、流れる雲も表情を変えるし、目が離せない展開。
他のカメラマンは全く撮影していませんが、私は一人で雲を撮り続けました。

月がだいぶ高くなり、雲も一面に広がってしまうと模様が出なくなるため、ある程度のところで過眠へ。

ようやく雲が切れて星空が見え出したのは、夜明けが近づいてからでした。
ふもとっぱらの夜景と富士山

この頃にはカメラマンが大集結して20人以上でしょうか。
大型三脚+脚立でオーバーヘッドを狙うカメラマンも多数、また川の中に長靴で踏み入るカメラマンも多数。
それぞれの苦労がありますね。

さて、夜が明けてくると同時に、富士山は「月光紅富士」の状態に。
あまり良い染まりではなかったですが、赤くなっているのはわかりますね。
ふもとっぱらの月光紅富士
そしてレンズの結露にも悩まされました。
今のところ結露対策はしていないので、必至にレンズを拭くのみ…ヒーター買えよって(^_^;)

「朝は朝焼けで、その後晴れて快晴のダイヤモンド富士」という展開が超欲張りな理想だったのですが、
夜明け前から徐々に快晴となってきて、朝焼けはちっともありませんでした。

朝焼けだけでも、ダイヤだけでも、どちらかが撮れれば万々歳というシチュエーション。とても贅沢など言えません。

それにしても風が穏やかな気候で、逆さ富士は見事だったと思います。
小さい池といえども、風があれば波は立つそうで。正に理想的な逆さ富士。

ちょうど画面の左下あたりが池の水源になっており、細い小川から水が入ってくるところです。
河口付近はやはり少しだけ波が立ちますが、低めの位置からカメラのアングルを10cmも上げると、
「富士山が映る水面の位置」を向こう側に移動させることができるため、手前の波の影響を軽減できます。
かなり細かく考えてやっています(笑)

月も沈んで、マジックアワーの時間帯。
やはりこういう写真がSNSではウケるのかな?とか思いつつ^^;
ふもとっぱらの夜明けの富士山
ここで夜明けの撮影は初めてのことでしたが、やはり広角レンズが活きる素晴らしい造形ですね。

そして、このあたりで”オイシイ時間”は終わりとみて、一旦車に戻りました。
結露がひどいのでレンズやカメラを温めることにしました。

しかし車に戻ってビックリ。
実は、レンズの表面のみならず、中まで結露していたんですね。そりゃ、夜通し撮影してればこういうこともあるか。

車の暖房を全開にしてカメラとレンズを温め続けました。20~30分ほど温めて、ようやく結露が取れてくる。
いや~欲張ってずっと撮影を続けていたら、本番でどうなっていたことかと冷や汗モノです。
無事に”ホカホカ”になったカメラとレンズを持って、現地に戻ります。
その瞬間まで残り30分!

こんなツイートをしましたが、状況写真にしては人気が出ましたね。デジカメでは広角ばかりで撮っていたので、スマホで撮ったこの標準焦点距離の写真が貴重。
富士山の背後にある雲がアクセントを添えてくれました。

そしてこの状況写真。たくさんのカメラマンが集まりました。
「今年は多いねえ」と話しているカメラマンも。テレビでの放送があった影響だとか?
テレビの影響力はほんとにスゴイです…。
ふもとっぱらダイヤモンド富士を狙うカメラマン
最終的にはトータル30名ほどでしょうか。完全に定員オーバー。

横からも撮りました(笑)これが富士山撮影の”裏側”と言いますか…
美しくて神秘的な光景が広がる一方で、カメラマンはこの人混みの中にいます。
美しい写真も良いですが、「現実」も多くの人に知ってもらいたいです。
ふもとっぱらのダイヤモンド富士を狙うカメラマン

そしていよいよその瞬間が迫ってきます!緊張感が高まります。
ふもとっぱらのダイヤモンド富士
これのために2000円を払い、13時間待ったわけです。
天気は申し分なく、本当に神様が味方してくれたなあと思いました。

そして…
ついに出ました!カメラマン達、夢中でシャッターを切ります。
ふもとっぱら ダイヤモンド富士

私はフィルム&デジタルの2台体制だったので、もうアタフタ。
ダイヤモンド富士の撮影は(特に上りは)一瞬!

当初からF22で撮ろうと思っていたのに、出始めの設定はまさかのF13。
絞りによる影響を事前に把握しきれず、「変えながら何枚か撮ろう」と思っていたのに、慌てすぎて忘れてました。
しかもF16にしたつもりがなぜかF13になっていて全く意図しない設定に(T_T)

が、まだタイミングが間に合ううちにF22に修正。
やはりF22のほうが光芒が綺麗に出るので、コチラが正解。
ダイヤ撮るなら事前に練習しとけって話ですな。
このレンズでダイヤモンド富士を撮るのは、初めてのことでした。アタフタ―。

なんとか間に合ってF22。思ったより綺麗に撮れて満足^^
ふもとっぱらのダイヤモンド富士
逆さ富士もバッチリ。
去年の同じ時期は池が凍っていたそうなので、今回は本当にあらゆる条件で恵まれたと思います!

ということで、ダイヤが終わるとカメラマン達はあっという間に去っていきます。本当に早い。
隣にいたカメラマンは14時間以上も待ったはずなのに、さっさといなくなってしまいました。

本番カメラが一段落したところで、スマホでも一枚パシャリ。
広角じゃないのが逆に貴重かも?(笑)
スマホ撮影したふもとっぱらのダイヤモンド富士

タイミング遅れですが、いつもダイヤモンド富士の撮影で使う35mmのレンズに換えて撮ってみました。
ふもとっぱらのダイヤモンド富士
この頃にはもう半数のカメラマンは撤収していたかと。早いね。

ちょっと太陽が上がったところで再び広角。もう使えないカットだ(笑)
ふもとっぱらのダイヤモンド富士

これにて撮影終了。
力を抜いて、のんびりと。しばらくはこの景色を楽しみました。スマホ撮影です。
ふもとっぱらの逆さ富士

この後も光が回るまで粘ってみようと思いましたが、午前中から雲が湧いてきて富士山は隠れてしまいました。
今思えば、晴れてるうちにもう少し撮っておけば良かったか…

~締め~

結果的には大満足の撮影となりました!
「ダイヤモンド富士なんていつでも撮れる」の考えから一転して、気合の入った撮影。

ただ快晴というのみならず、風も穏やかで見事な逆さ富士。
また、熾烈な場所取り争いにも負けず、レンズの結露や設定ミスにも負けず。
去年は氷結していた池も今年は溶けていて。

正に困難を乗り越えて、運を味方につけて、手に入れた光景。
そう考えると、気持ちが熱くなってしまいました。
今回の写真は貴重な一枚として、後に残したいと思います。

この日の「今日の富士山」

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