”撮影ポイント問題”に答えはあるのか?
富士山写真家 オイです。
今回は昨今話題に挙がっている”撮影ポイント問題”について言及してみたいと思います。
「撮影ポイント問題」というのは、インターネットやSNSが当たり前に存在する現在においての、
写真撮影スポット情報のありかたを議論するものです。
私がカメラを始めた頃にはもうインターネットで写真を公開するのが当たり前になっていて、当時から気になる問題でした。
しかしながら今日まで私がなかなか表立って発言してこなかったは、私自身の中でもまだ答えが明確には出ていないからです。
インターネット時代における撮影ポイント情報をどのように扱うべきなのか?改めて少し考えてみたいと思います。
まず掘り下げてみますが、何が「問題」なのでしょうか。
主には2つの意味があると思います。
1つは、撮影ポイントは物理的に有限で、そこを訪れる人が多くなると環境が変わってしまうということ。
撮影できる定員が少ないところに人が押しかけると、競争が発生してしまいます。
それから、自然破壊や迷惑問題が起こります。
道がなかったところが人に踏まれて道ができてしまう。
植物が踏まれてなぎ倒されてしまう。
駐車スペースがない(または少ない)ところでは路上駐車が発生する。
一部のマナーの悪い人がゴミを捨てるなど環境破壊をする。
道路などで撮影する人が、一般の人の邪魔になる。
大自然の中や、穏やかな公園や観光地において、カメラマンが三脚を並べて雰囲気を壊してしまう。
カメラマン目線でも厄介なことが多いです。
場所取りのために早くから現地入りする必要が出てくる。
狭いポイントでは好みのアングルで撮るために移動できなくなる。
夜間撮影では、別のカメラマンのライトや車のライトで撮影が邪魔されてしまう。
同じ場所で撮影しているカメラマンと何らかのトラブルが起こる(譲り合いができず言い合いになる等)。
道路が狭いところでは、車が増えるとすれ違い等の問題が起こる。
このようなことがあり、撮影ポイントに人が多く押しかけるようになると、「問題」となるわけです。
もう1つは、「撮影ポイント情報は、情報資産である」ということでしょうか。
現代の情報化社会においては、何にしても「情報を持っている」ということはアドバンテージになります。
撮影ポイントの情報もそうです。
カメラマンの間では、いろいろな撮影ポイントを知っている人は、憧れの対象です。
撮影ポイントは、誰もが知りたい情報です。
撮影ポイントを知らない人は、知っている人に「教えてくれ」とせがみます。
今や、撮影ポイントは、「お金を払ってでも手に入れたい情報」であると言えます。
そういう意味で、もはや撮影ポイントは軽く扱うことができず、非常に意味の重たいものになっているのです。
カメラマンは「人には教えたくない秘密のポイント」を持っていたいし、「人には撮れないオリジナルの写真を撮りたい」と思っています。
だからこそ、撮影ポイント情報に敏感になります。
インターネット時代になって、事情が大きく変わりました。
以前から、紙媒体で「撮影本」なども出版されており、撮影ポイントは紹介されていました。
しかしインターネット時代には「拡散」ということが起こります。
インターネットの情報網は非常に活発でスピーディです。
とくに「SNS」の存在が大きい。FacebookやTwitterのことです。
ネット上に出現した情報は、またたくまに拡散します。
「絶景が見られるポイントがある」と話題になれば、たちまち注目を集めます。
インターネット検索をすれば、一度表に出た情報は検索して見つけることができるかもしれません。
それから、LINEなどのコミュニケーションツールや、「スクリーンショット」などという技術も少なからず影響があるかと。
気になる写真があったら、スマホでスクリーンショットを撮って、詳しそうな人にLINEを送って「この写真はどこで撮ったのかな?」なんて気軽に聞くことができます。
そうやって、撮影ポイントは拡散されていきます。
良いものは知りたい、話題性のあるものは拡散する、そういう当たり前のことが起こります。
しかし上に書いたように、撮影ポイントは物理的に有限であり、重要な情報資産だということです。
ここが難しいところで、「問題」と言わざるをえないところです。
たとえば物理的に無限に生産できる”ヒット商品”があれば、どんどん生産してどんどん売れれば良い。
販売する側も、買う側もハッピーです。
しかし撮影ポイントはそうじゃない。
欲しい人が増える一方で、場所は限られているし、人が増えることで問題を引き起こす恐れがあるのです。
そういうことが、いま起こっています。
だから、写真を撮る人なら誰でも、撮影ポイントの扱いには慎重になってもらいたいのです。
その場所にたくさんの人が押しかけたら、どうなるか?を考えて欲しい。
考えた結果、「別に人が増えても問題がない」と判断しなたら、いくらでも情報を拡散して良いと思います。
ただしかし、ほとんどの撮影ポイントにおいて、そうではないと私は思っています。
どんなに広い場所でも、多くの人が押しかけたら、多かれ少なかれ何らかの問題は起こる、と思っています。
ましてや狭い撮影ポイントだったり、私有地、駐車スペースのないところ、公に公開されていないところではどうでしょうか。
「ここは知られたくない」と必死に場所を守っているカメラマンもいるかもしれません。
だからこそ、私は、非常に慎重で、常に撮影ポイント問題には神経を尖らせていました。
ですがその一方で、私も多くの情報を発信している事実があります。
情報が”商品”になりうる以上、誰もが矛盾を抱えてもおかしくない立場にいます。
たとえば「良い写真が撮れた!」と思ってSNSに写真をアップしたら、誰かがそれを見て「行ってみたい!」と思うでしょう。
その時点で情報拡散に加担しています。
さらに文章を加えて「どこどこに行って絶景を見てきました」と言えば、より見る人を楽しませるコンテンツとなります。
他人の写真に対して「ここは○○ですね」とコメントすることも、ついついやってしまいますが、これも情報を開示していることになります。
しかも、撮影者は「教えたくない」と思っている意図に反しているかもしれません。
誰もが、無意識にでも情報拡散する時代になっています。
最初は誰もが無意識で、情報の重さにも気づいていないかもしれません。
しかし、少しカメラマン達の世界に足を踏み入れてみると、情報が実は重いものだということも見えてくるかもしれません。
撮影ポイントは誰のものでもないし、自然や公共の場に存在しているのだから、オープンにしてもいい、という考え方も”アリ”でしょう。
しかし逆に、例えばあるカメラマンが、誰も知られていない秘密のポイントを見つけたとして…、その見つけたものに”価値”はないのでしょうか?
このあたりが、答えの出ないところです。私もずっと悩み続けています。
また、SNSの社会においては、「時間軸」という新しい問題が加わってきます。
それは、古くから知られていても、「今」は話題ではなかった情報が、「今」話題になり、盛り上がることがあります。
「今」話題の情報には、人が集まる傾向があります。
広く浅く情報が広がってたものを、一時的に「話題」にすることで、エネルギーが集中してしまうこともあります。
時間軸的に話題が集中することで拡散し、結果的に問題となることも考えられます。
既存の情報だからといっても、ピックアップされて注目が集まるとまた意味合いが変わってきます。
私としても、判断が難しい微妙なラインで、線引きできないところが多いです。ずっと悩みの種です。
誰しもに情報をオープンにしたい気持ちも、隠したい気持ちもあって然りだと思います。
その微妙な間で、私も揺れています。
ただし、インターネット時代において、情報というものは、一度拡散してしまうと、元に戻すことができないという性質があります。
だから私としては、今のところは閉鎖的な方向で動くようにしています。
メジャーなポイントであってもあまり声を大にしては語らないようにしたり。
撮影ポイントの話題にはなるべく触れないようにもしています。
秘密の撮影ポイントについては、親しい仲間にも教えないようにしていたり、
写真を撮ってもネット上に公開しないようにしているものもあります。
情報を閉じる意味でも、撮影は同行者をなるべく排除して一人で行くようにしています。
知りたい撮影ポイントがあっても、極力、人には聞かず、自分一人で調べるようにします。
自分でもやりすぎと思うほど、閉じている部分もあります。
一方、サイト上に堂々と情報公開しているものもあります。
情報が”商品”であることを踏まえた上での公開でもありますが、気をつけていることもあります。
それは「今」話題という形を取らないこと、人の意識を集中させないことです。
人は「今話題」な情報に意識が行く傾向があるため、時間軸を分散させることを考えています。
最新の写真には撮影ポイント情報を載せないが、古い写真には情報を載せる、などです。
話題になりそうなものは、あえて時間を置いてから公開することもあります。
それから情報の全体数を増やすことで、意識を分散させることも考えています。
情報が少ないと人の意識が集中しますが、情報を多く出すことで意識が分散します。
そうやって、情報を出しつつも、情報を薄める努力はしています。
どういう情報の出し方をすれば人が興味を示し、逆に興味を示さないかは、よく考えています。
とにかく、情報には重さがあるということ。
はじめは意識しないかもしれないが、実は重たいものであるということ。
そして解釈は人それぞれにあり、答えはないということ。
情報の扱い方については、それぞれに考えを持っていて欲しいです。
私にも、人に教えたくない撮影ポイントがある。
逆に、教えて欲しいと思うこともある。
情報を教えれば人が寄ってくることも知っている。
撮影ポイントに人が増えれば環境が壊れることも知っている。
非常に難しい問題です。
私の考え方も、日々変わっていくことでしょう。
カメラマンのみなさんが、それぞれがじっくり考えて欲しい問題です。
今回は昨今話題に挙がっている”撮影ポイント問題”について言及してみたいと思います。
「撮影ポイント問題」というのは、インターネットやSNSが当たり前に存在する現在においての、
写真撮影スポット情報のありかたを議論するものです。
私がカメラを始めた頃にはもうインターネットで写真を公開するのが当たり前になっていて、当時から気になる問題でした。
しかしながら今日まで私がなかなか表立って発言してこなかったは、私自身の中でもまだ答えが明確には出ていないからです。
インターネット時代における撮影ポイント情報をどのように扱うべきなのか?改めて少し考えてみたいと思います。
まず掘り下げてみますが、何が「問題」なのでしょうか。
主には2つの意味があると思います。
1つは、撮影ポイントは物理的に有限で、そこを訪れる人が多くなると環境が変わってしまうということ。
撮影できる定員が少ないところに人が押しかけると、競争が発生してしまいます。
それから、自然破壊や迷惑問題が起こります。
道がなかったところが人に踏まれて道ができてしまう。
植物が踏まれてなぎ倒されてしまう。
駐車スペースがない(または少ない)ところでは路上駐車が発生する。
一部のマナーの悪い人がゴミを捨てるなど環境破壊をする。
道路などで撮影する人が、一般の人の邪魔になる。
大自然の中や、穏やかな公園や観光地において、カメラマンが三脚を並べて雰囲気を壊してしまう。
カメラマン目線でも厄介なことが多いです。
場所取りのために早くから現地入りする必要が出てくる。
狭いポイントでは好みのアングルで撮るために移動できなくなる。
夜間撮影では、別のカメラマンのライトや車のライトで撮影が邪魔されてしまう。
同じ場所で撮影しているカメラマンと何らかのトラブルが起こる(譲り合いができず言い合いになる等)。
道路が狭いところでは、車が増えるとすれ違い等の問題が起こる。
このようなことがあり、撮影ポイントに人が多く押しかけるようになると、「問題」となるわけです。
もう1つは、「撮影ポイント情報は、情報資産である」ということでしょうか。
現代の情報化社会においては、何にしても「情報を持っている」ということはアドバンテージになります。
撮影ポイントの情報もそうです。
カメラマンの間では、いろいろな撮影ポイントを知っている人は、憧れの対象です。
撮影ポイントは、誰もが知りたい情報です。
撮影ポイントを知らない人は、知っている人に「教えてくれ」とせがみます。
今や、撮影ポイントは、「お金を払ってでも手に入れたい情報」であると言えます。
そういう意味で、もはや撮影ポイントは軽く扱うことができず、非常に意味の重たいものになっているのです。
カメラマンは「人には教えたくない秘密のポイント」を持っていたいし、「人には撮れないオリジナルの写真を撮りたい」と思っています。
だからこそ、撮影ポイント情報に敏感になります。
インターネット時代になって、事情が大きく変わりました。
以前から、紙媒体で「撮影本」なども出版されており、撮影ポイントは紹介されていました。
しかしインターネット時代には「拡散」ということが起こります。
インターネットの情報網は非常に活発でスピーディです。
とくに「SNS」の存在が大きい。FacebookやTwitterのことです。
ネット上に出現した情報は、またたくまに拡散します。
「絶景が見られるポイントがある」と話題になれば、たちまち注目を集めます。
インターネット検索をすれば、一度表に出た情報は検索して見つけることができるかもしれません。
それから、LINEなどのコミュニケーションツールや、「スクリーンショット」などという技術も少なからず影響があるかと。
気になる写真があったら、スマホでスクリーンショットを撮って、詳しそうな人にLINEを送って「この写真はどこで撮ったのかな?」なんて気軽に聞くことができます。
そうやって、撮影ポイントは拡散されていきます。
良いものは知りたい、話題性のあるものは拡散する、そういう当たり前のことが起こります。
しかし上に書いたように、撮影ポイントは物理的に有限であり、重要な情報資産だということです。
ここが難しいところで、「問題」と言わざるをえないところです。
たとえば物理的に無限に生産できる”ヒット商品”があれば、どんどん生産してどんどん売れれば良い。
販売する側も、買う側もハッピーです。
しかし撮影ポイントはそうじゃない。
欲しい人が増える一方で、場所は限られているし、人が増えることで問題を引き起こす恐れがあるのです。
そういうことが、いま起こっています。
だから、写真を撮る人なら誰でも、撮影ポイントの扱いには慎重になってもらいたいのです。
その場所にたくさんの人が押しかけたら、どうなるか?を考えて欲しい。
考えた結果、「別に人が増えても問題がない」と判断しなたら、いくらでも情報を拡散して良いと思います。
ただしかし、ほとんどの撮影ポイントにおいて、そうではないと私は思っています。
どんなに広い場所でも、多くの人が押しかけたら、多かれ少なかれ何らかの問題は起こる、と思っています。
ましてや狭い撮影ポイントだったり、私有地、駐車スペースのないところ、公に公開されていないところではどうでしょうか。
「ここは知られたくない」と必死に場所を守っているカメラマンもいるかもしれません。
だからこそ、私は、非常に慎重で、常に撮影ポイント問題には神経を尖らせていました。
ですがその一方で、私も多くの情報を発信している事実があります。
情報が”商品”になりうる以上、誰もが矛盾を抱えてもおかしくない立場にいます。
たとえば「良い写真が撮れた!」と思ってSNSに写真をアップしたら、誰かがそれを見て「行ってみたい!」と思うでしょう。
その時点で情報拡散に加担しています。
さらに文章を加えて「どこどこに行って絶景を見てきました」と言えば、より見る人を楽しませるコンテンツとなります。
他人の写真に対して「ここは○○ですね」とコメントすることも、ついついやってしまいますが、これも情報を開示していることになります。
しかも、撮影者は「教えたくない」と思っている意図に反しているかもしれません。
誰もが、無意識にでも情報拡散する時代になっています。
最初は誰もが無意識で、情報の重さにも気づいていないかもしれません。
しかし、少しカメラマン達の世界に足を踏み入れてみると、情報が実は重いものだということも見えてくるかもしれません。
撮影ポイントは誰のものでもないし、自然や公共の場に存在しているのだから、オープンにしてもいい、という考え方も”アリ”でしょう。
しかし逆に、例えばあるカメラマンが、誰も知られていない秘密のポイントを見つけたとして…、その見つけたものに”価値”はないのでしょうか?
このあたりが、答えの出ないところです。私もずっと悩み続けています。
また、SNSの社会においては、「時間軸」という新しい問題が加わってきます。
それは、古くから知られていても、「今」は話題ではなかった情報が、「今」話題になり、盛り上がることがあります。
「今」話題の情報には、人が集まる傾向があります。
広く浅く情報が広がってたものを、一時的に「話題」にすることで、エネルギーが集中してしまうこともあります。
時間軸的に話題が集中することで拡散し、結果的に問題となることも考えられます。
既存の情報だからといっても、ピックアップされて注目が集まるとまた意味合いが変わってきます。
私としても、判断が難しい微妙なラインで、線引きできないところが多いです。ずっと悩みの種です。
誰しもに情報をオープンにしたい気持ちも、隠したい気持ちもあって然りだと思います。
その微妙な間で、私も揺れています。
ただし、インターネット時代において、情報というものは、一度拡散してしまうと、元に戻すことができないという性質があります。
だから私としては、今のところは閉鎖的な方向で動くようにしています。
メジャーなポイントであってもあまり声を大にしては語らないようにしたり。
撮影ポイントの話題にはなるべく触れないようにもしています。
秘密の撮影ポイントについては、親しい仲間にも教えないようにしていたり、
写真を撮ってもネット上に公開しないようにしているものもあります。
情報を閉じる意味でも、撮影は同行者をなるべく排除して一人で行くようにしています。
知りたい撮影ポイントがあっても、極力、人には聞かず、自分一人で調べるようにします。
自分でもやりすぎと思うほど、閉じている部分もあります。
一方、サイト上に堂々と情報公開しているものもあります。
情報が”商品”であることを踏まえた上での公開でもありますが、気をつけていることもあります。
それは「今」話題という形を取らないこと、人の意識を集中させないことです。
人は「今話題」な情報に意識が行く傾向があるため、時間軸を分散させることを考えています。
最新の写真には撮影ポイント情報を載せないが、古い写真には情報を載せる、などです。
話題になりそうなものは、あえて時間を置いてから公開することもあります。
それから情報の全体数を増やすことで、意識を分散させることも考えています。
情報が少ないと人の意識が集中しますが、情報を多く出すことで意識が分散します。
そうやって、情報を出しつつも、情報を薄める努力はしています。
どういう情報の出し方をすれば人が興味を示し、逆に興味を示さないかは、よく考えています。
とにかく、情報には重さがあるということ。
はじめは意識しないかもしれないが、実は重たいものであるということ。
そして解釈は人それぞれにあり、答えはないということ。
情報の扱い方については、それぞれに考えを持っていて欲しいです。
私にも、人に教えたくない撮影ポイントがある。
逆に、教えて欲しいと思うこともある。
情報を教えれば人が寄ってくることも知っている。
撮影ポイントに人が増えれば環境が壊れることも知っている。
非常に難しい問題です。
私の考え方も、日々変わっていくことでしょう。
カメラマンのみなさんが、それぞれがじっくり考えて欲しい問題です。
Posted at 2017.03.12
Updated at 2017.03.13