久々に大物を釣った感じでしょう!!
興奮冷めやらぬうちに投稿します。
世紀の瞬間がやってきました。月食とパール富士です。
今回の部分月食は約98%が影に入る、「ほぼ皆既月食」となる月食でした。
その食の最大が訪れる18時3分頃に、ちょうどパール富士が観測できるということで、見逃せない条件でした。
過去にも何度か月食でのパール富士の機会はあったものの、天候に恵まれず撮影はできませんでした。
それもそのはずで、月食でない通常のパール富士ですらいつも天気に泣かされるのが当然なので、月食でパール富士など撮れたら奇跡というものです。
しかし今回は数日前から「晴れ」の予報が出ており、期待感を煽ります。
天気があまりにも悪そうならそもそも家から出ませんが、この予報ならと、今回は少し興奮気味に臨みました。
ちょうど前日も晴れており、田貫湖でダブルパール富士を撮影。
翌日の月食もほど近い場所であるため、家には帰らずに現地滞在することにしました。
前日の撮影終了後、予定していた現場に入りました。
なんと24時間前の到着スタンバイです!!
きちんと1日分の食料をしっかり買い込んで来ました。
ここまで気合が入っていたのはいくつかの理由がありました。
ひとつは2012年5月21日の金環日食のときも、朝霧高原の農道に車が溢れてかなりの人がいた事。あの日も雲に阻まれました。
その時の人の混み方と、撮影予定地での駐車スペースの少なさや、道の狭さ等を考慮して、後から訪れて困らないようにしようということです。
それから、現地のロケハンが済んでいなかったので、直前ではありますが見ておこうということ。
あとは撮影本番までに疲れないようにする、等でしょうか。
そういうわけで24時間前に現地に行くと、なんと既に一人のカメラマンが三脚を立てていました!
先客がいたか…!と思ったのですが、翌朝には居なくなっていたので。。。月食狙いではなかった?ようです。
私は草原の隅っこで一晩を明かし、翌朝からゆっくりと富士山を眺め、撮影場所を歩いて探ったりしながら過ごしました。
ところがね、昼前になってもカメラマンが一人も来ないのです。
なんという気合の空回り。
午後から参加で十分間に合いそうでした。
今回は月食パール富士も色々な場所から撮影可能なので、一箇所に人が集中しなかったようです。
これなら余裕だと思い、昼前から少しドライブがてら静岡県内をウロチョロとロケハン等。
結局、月食の約2時間前の16時頃に現地に戻ってきて、そのときにも車が5台ほどでさほど混雑はありませんでした。
県道沿いのポイントには路上駐車と三脚の列ができていましたが…
そしていざ本番へ。1時間前くらいからスタンバイします。
本来の理想的な撮影位置には入れず、少しズレたポイントに入ります。
そして明るいうちに富士山にピントを合わせ、構図を作って暗くなるのを待ちました。
天体撮影などはあまりしないため、不慣れな作業の連続。
インターバル撮影機能も使ったことがないわけではないですが、ニコンZを買ってからは初めて使いました。
こちらも事前に動かしてシミュレーションします。
と、最後の最後でミスに気付いてしまったんですね。
撮影位置の特定の際の設定を大きく間違えていて、場所や時間がズレていることが判明…!
月食の30分前でしたが、セッティングが終わっていた3台のカメラと三脚を担いで数十メートルを移動。これがまた大変でした。
そしてこの時、カメラの1台のピントが狂ってしまったようでした…
最後は天気です。
正直に言って、「非常に怪しい天気」でした。
晴れ予報は曇り予報に変わっており、GPV等の数値予報でも上空が薄曇りの予報で、22時頃まで晴れません。
ただ、日中から薄雲の隙間に青空があり、うまく雲の隙間から月が出れば撮れる可能性があると狙っていました。そこしかない。
日没時には、年に1度クラスの盛大な夕焼けが見舞いました。
雲があるから夕焼けする。。こんなときに雲が出なくても良いのに、、って。
それもまた綺麗でしたが。
いよいよ空も暗くなって直前の山頂付近。
月が富士山の裏に隠れているので、今日、月を見るのは誰よりも最後です。
Twitterなどの速報では既に東の空から昇ってくる月食を撮影したという人がチラホラ。
薄曇りで見えないだとか、見えているだとか、人により様々。まさに「雲次第」の状況でした。
目視では薄雲が出ていますが、濃いのか薄いのか。
今年の5月26日にあった部分月食パール富士では、雲が厚くて月の光すら確認できずに終わりました。
そんな中、今回は雲の隙間から星が見えていたので、「これは…!」という状況。
そして月の出が近づくに連れ、山頂付近がやや明るく、そして赤銅色に光りつつあるのが分かりました。
せめて月がそこにあることだけでも分かって欲しい!そう願って待っていると、いよいよ月が出たのでした。
それはそれは、思ったよりもクッキリと出ました。
月食になっているのが分かりました。
雲の影響は限りなく少ない!
そして富士山の上に乗りました。素晴らしい月食です。
過去に見たことのない光景に鳥肌が立ちます。
おそらく前例のない撮影です。皆既月食に近いパール富士です。
通常、日が落ちて暗くなってからのパール富士は、月光の明るさが強すぎるため、富士山と月を同時に写すのが難しくなります。
しかし皆既に近い月食の最中のみは、月の明るさが非常に暗くなっているため、富士山と月面を同時に写すことができるのです!
なんということでしょう。本当にこんな現象があるのか…!
などと言って感動している暇もなく、3台のカメラでシャッターを切り続けます。
うち2台はインターバル撮影で自動的に撮影しています。
ここで不慣れが災いして、いくつかのミスも発生。
1つは先ほど書いた通り、1台は移動した際にピントが少し動いてしまったようで、全編に渡りピンボケ。
拡大しないと分からないかもしれませんが、少しボケました。
もう1つのミスは、インターバル中のカメラでちゃんと撮影できているのか分からず途中で触ってしまったこと。
その際になぜかAFが動いてしまい、肝心なシーンでピントが外れました。
その後、再度ピントを合わせ直しましたが、想定外の事件。
事前テストでは、インターバル撮影中に撮影結果が表示されていたのですが、なぜか表示されずずっと黒い画面となる場合があるようです。
実際は撮影はできていました。
それから、露出の問題。
こちらも事前に調査が甘く、月食の露出をしっかり把握していませんでした。
皆既の場合はかなり暗く、その前後では一気に明るくなるため、また雲の影響もあるため正解はなさそうですが、もう少し考えておくべきでした。
結果を見ながら露出を調整する予定でしたが、3台を操作しながら結果を確認して、というのは無理でした。
結果的に、最初に設定した露出で突き進んでおり、運良くそれが正解となったという感じです。
3台で撮影したうち、2台を自動撮影、1台を手動撮影にしたのは良いアイディアだったと思います。
ニコンZマウントとFマウントをインターバル、富士フイルムGFX100を手動撮影としました。
手動撮影では、シャッタースピードやISO感度、そして構図を変えながら色々と撮影したため、他の2台が失敗していても保険が効きますね。
富士フイルムGマウントには明るい望遠レンズがないため、今回はサブ役でした。
ニコンの機材は手放すかも迷った時期もありましたが、やはり明るいレンズ(しかも高解像)は正義なので、月や星をやるならやはりニコンも手放せないなと思いました。
今回はニコンZ7で撮影したこちらの一枚がベストカットとなったと思われますので、こちらを投稿します。
終わってみての感想は、「一枚でもマトモに撮れているのがあって良かった。。」です。
ニコンZレンズのお陰もあり、画質も良く満足できそうです。
これまでも何度かタイミングはあったものの撮れず、今回ようやくです。
富士山と離れた月食は撮ったことがありましたが、パール富士となると迫力が違います。
そして誰かが言っていたのですが、月食で月が赤いので、”ルビー富士”だと。
パール富士ならぬルビー富士。確かに。これは奇跡の瞬間です。
次回の月食パール富士がいつかはまだ調べていませんが、今回のように条件が良く撮影できるのは、人生のうちでも最後なんじゃないかと思いました。
今回の作品は、大事な一枚としたいと思います。
運命の巡り合いに感謝。
思えば、24時間前から待機というのもそうですが、時間の自由が効くからこういうことが出来るわけです。
「富士山は逃げない」と何度か人に言われたことがありますが、このようなチャンスが次にいつ来るでしょうか?
富士山は待ってくれません。逃げますよ。
だから好きなときに出掛けられる生活にどうしてもしたかった。
だからサラリーマンはできなかった。辞めた。
写真家の仕事をしていて良かったと思えます。
大変なことも多いけど、自分のタイミングで仕事を進めています。
これからも誰かのところにパワーが届きますように。
アップロード日: 2021年11月19日