国立競技場が建て替え工事中の神宮外苑からのショットです。
冬のダイヤモンド富士の日は数百人のカメラマンでごった返しましたが、この日は静かな朝を迎えました。
とはいっても20人くらいは集まっていたので、意外に認知度が高かったですね。
不規則な軌道で動く月は、なかなか思い通りの位置で撮影できません。
ダイヤモンド富士は毎日少しずつ軌道がずれていくので、場所を決めてから、その場所で見られるのはいつ…という風に逆算できたりしますが、
パール富士の場合は、満月のタイミングで見られる場所はここ、という順番になってしまいます。
そういう意味で、ある特定の場所でパール富士を観測するのは難しく、宇宙の偶然に任せるしかありません。
そんな中、およそ1年間限定で富士山の展望が開かれたこの場所で
運良くパール富士が観測できるというのは、ほぼ奇跡に近いことです。
理論的には観測可能だとわかったとき、この5月後半という梅雨にも近い時期では
当然のように厳しい条件になるだろうと思っていました。
ところが天候の面でも奇跡が起きました。
ふつう、この5月に東京など長距離からの富士山を望むのは非常に難しいです。
それがこの日のこの時間に、見事に晴れていたのはまさしく奇跡。
ただ、ヌケはさほど良くなく、富士山がほとんど見えていないというのは致し方ないところです。
本来であれば日光が富士山にさして照らされている時間でしたが、どうも雲があったのか光が入らず。
地平線付近の霞んだ空気にやられて、月も薄く消えそうな色をしていました。
ようやく月が富士山の山頂に掛かると、シルエットが浮かび上がり「パール富士」の完成です。
もっとピカピカの快晴でスッキリした空気だったら、どんな写真になっていたかも気になりますが、
諸々の奇跡の条件を経て、これが撮れたということは価値があると思います。
正直に言って、「絶景」とは言いがたい地味な景色ではあるのですが、
2020年東京オリンピックに向けた準備期間のほんの短い期間、
このコンクリートジャングル東京の地上から唯一見える富士山の頭に、
ただ一度だけ見られるパール富士の日に、よく晴れた。
そういう希少価値あっての一枚です。
何を「良い写真」とするかはいろいろな見方があります。
この一枚は、とにかく「貴重さ」で言えば抜群に高いショットです。
アップロード日: 2016年5月24日