8/5 4泊5日南アルプス白峰大縦走[4日目前半・農鳥小屋~大門沢降下点]

農鳥岳から望む富士山の写真
『 黄金の輝き 』
Nikon D800E / Nikon AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8G ED

今回の旅の計画および全容は、ダイジェスト編をご覧ください。

各日の山行記はコチラ。
初日
2日目
3日目

南アルプスへ乗り込んで早4日目、いよいよ白峰三山最南の農鳥岳へ向かい、
白峰三山縦走を達成しようとしています。
ここまでの流れはほぼ順調で体力の余裕もあり。

それでは4日目・・・
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何度も言うが、カメラマンの朝は早い。

登山家の朝も割りと早いけど、山岳写真家は朝も夜も関係なしである。

4日目は0時頃の出発を目標とする。
起きたのは23時半頃…。

とりあえずテント前から状況確認で撮影してみると、非常に霞んだ空でした。
ちょっとヌケが悪すぎる。雲海も高くて富士山の頭がちょこんと出ているだけ。
農鳥小屋テント場から望む夜景

真夜中、一人起きだしてテント内の片付けをします。
荷物をパッキング。

真夜中ですが月明かりはON。
暗闇でのテントの撤収も特に問題はなかった。

周りを見渡すと、どうやらもう一人の登山者もなにやら動いていた様子。
結局どうなったかわからないが、私が登っているときに間ノ岳方面に見えた光がきっと彼だろう。


さて、静かなテント場で一人準備を終えると、出発の撮影。
0時28分、早いです。
農鳥小屋を出発

ここから、昨日見上げた西農鳥岳へと上がっていきます。
ゴツゴツした激しい岩場のように見えた山。

ただし登山道はしっかりとしていて、危険箇所もなし。
上部はかなり険しい岩場のように見えるが、右側を巻いて登っていきます。

ある程度登ると、標識が現れて西農鳥岳に到着か。
1時16分。案外あっさりでした。
西農鳥岳付近の標識

夜なのでろくな写真が撮れませんが、西農鳥岳の標柱。
比較的新しい様子。
西農鳥岳の標柱

月光もしっかりとあり、西側を見ると富士山の姿は見えました!
たださすがにiPhoneでは撮れないので、ここでの写真はなしです。

農鳥岳の平らな背中の上から顔を出す富士山。
しっかりと見えましたよ。


実はこの西農鳥岳が3051m、メインとなる?農鳥岳は3026mで、主峰のほうが低いのです。
なにか違和感はありますが、行ってみるとなんとなく納得の雰囲気はあります。

展望に関しても、西農鳥岳からは富士山は良く見えないですし…
東側からいわゆる「あれが白峰三山だ」と言って三山を眺める場合も、
見えるのは農鳥岳のほうでしょう。
西農鳥岳は農鳥岳の裏に隠れた位置です。

標高が低いほうがメイン。ちょっと不思議です。

さて、ここまで上がってしまえばあとは横移動か。

西農鳥岳~農鳥岳を目指します。
ここのコースタイムは40分。
西農鳥岳へ上がるよりは10分短いコースタイム。

しかし、ここが長かった…

西農鳥岳~農鳥岳間は歩きづらい岩場の連続。
そしてアップダウンもあります。

下がっては上がり、下がっては上がり。

ちょうど間ノ岳など北側から見えていたのは激しい岩場の岩壁で、
その裏側をトラバースしていくルートです。
なので稜線歩きではなくここは斜面トラバースですね。

夜なのであまり状況が見えなかったということもありますが、
ピークを越してもまた次のピークが見えてきてやる気を奪います。

途中には少し岩場を掴んでよじ登るような箇所も少しあり、
今回のルート内では一番慎重に行くところだったかもしれません。

さらに、簡単に谷間に落ちられそうなところに道があったりして、少々の恐怖感がありました。

そして最後の登り坂を登り切ると、農鳥岳山頂に到着して、一気に富士山の大展望です。

来ましたよ!2時5分!
農鳥岳の山頂標識
1時間半だったので、コースタイムをわずかにはみ出した程度。
大荷物+真夜中+慎重でこれくらいなら、悪くないタイムでしょう。


農鳥岳の山頂は不思議な二段構造になっていて、10mくらい下に少し広場(登山道)があります。
この真夜中に一人かと思ったら、下段にソロのテン泊者がいました。

一人じゃないのかとちょっとガッカリしつつ、でも一人の時間です。
山頂付近で展望が良さそうなので、荷物を下ろしてさっそく撮影開始。

まずはバルブで月光雲海。
農鳥岳から望む月光の富士山

小屋にいるときに比べると、標高が上がったこともあるし、2時間経ったので雲海が落ち着いてきた様子です。
上空はヌケてきたか?悪くはない。

ただ、またしてもピーカンです(T_T)
ちょっとした朝焼けも撮らせてくれないようです。

雲がなく景色に動きがないので、少々退屈です。

ちゃんと食事もしないで来ていたので、ここで自炊とします。
前夜のカップヌードルに続き、これからの主食はアルファ米。
お湯を注いで15分で出来上がり。
そこそこ美味しいです。

さらに山で嬉しいのは、スープ類ですね。
ご飯だけでは少し味気ないが、汁物があると満足感が非常に増す♪

ということで今回はお湯で溶くだけのスープの素をたくさん持ってきました。
アルファ米の空き容器でやっちゃいます。

ちと写真は汚いですがこんな感じでホウレンソウの味噌汁…
めっちゃウマイっす。
山で自炊

雲がないのでどう撮っていいかワカランです。
望遠にするか広角にするか、そんなくらいしかやりようがない。
これが広角でビシッと決めた農鳥岳からの夜景!
飛行機も入らず天然の空が撮れました。
農鳥岳からの富士山と甲府盆地の夜景

初めて目の当たりにする山並みは確かに独特。
鋭いピークも見えたりしてなかなかワクワクします。

左下の稜線は近いため少々作品には取り入れづらい。
ここで作品を作るならある程度望遠気味となるか。

こう見えて北岳山荘/肩の小屋よりも標高が高い場所です。
3026m、なかなかの高度感。

手前に1本の稜線はあるものの、その先は一気に山がなくなり、空撮的な雰囲気です。
こういう高度感のあるところは好き。

また左手には甲府の夜景がバッチリ。
農鳥小屋からも見えると書いてあったが、山頂からも同様ですね。
北岳では富士山の真下にある櫛形山が、やはり左側に移動した。
歩いてきた分、山並みは違って見える。

そんなことを考えながら引き続きの撮影。
徐々に夜明けがやってきますよ。
今日も左からオリオン登場。毎日見ている光景。
農鳥岳から望む夜明けのオリオン座と富士山

天気次第で、もっと早くから撮りたかったとか、こんなに早く来てもしょうがなかった、ということがありますが。
今回はゆっくり食事する時間もあったし、実に調度良かったかと思います。

さあいよいよ夜明け。
山並みがガス状雲海に浮かぶ。
雲海らしい雲海は今日もなし。
農鳥岳から望む夜明けの富士山

今日も上空ガス層により富士山は縞模様、フェイク冠雪です。

雲海の状態は昨日と酷似。
違う場所から撮影して心から良かったと思いますね。
2日連続同じ写真を撮ってもしょうがない(^_^;)

望遠もしっかり撮ります。
農鳥岳から望む朝焼けの富士山と山並み

そしてまた、前景を探して。
ピーカンの時ほど小細工は必要か?
農鳥岳から望む夜明けの富士山

今回もあまりカッコイイ写真にはならなかった…

さ、太陽が出てきましたよ。
5時3分撮影。
農鳥岳から見た御来光

そして富士山も光を浴びて。
農鳥岳から望む夜明けの富士山

いよいよすごいね!正に黄金に輝いてきました。
農鳥岳から望む朝の富士山

やっぱり高山の朝は格別!
でもこれが山の日常なのかもしれない。

徐々に色が変化してきます。
引き続き撮影しまくり。
山並み、ガス、太陽光が揃って素晴らしい光芒が出現。
農鳥岳から望む朝の富士山

山並みの手前側はやや寂しく感じていましたが、
この斜光が作った光芒で非常に画がまとまってきました。

う~ん、素晴らしい水墨画の風景。
農鳥岳から望む富士山
また富士山が秋に冠雪してから撮りたい光景でもあります。

日が出てから改めて標柱を撮影。
間ノ岳と北岳バッチリ!よく晴れました。
農鳥岳の標柱と間ノ岳・北岳

北岳と間ノ岳、デジカメ版。
農鳥岳から望む間ノ岳と北岳

ここから北岳をトリミング。
農鳥岳から望む北岳
南側から見る北岳は鋭いと聞いていたが、その通り。見れてよかった!
それにしても、右手の低部から左手の低部にかけてトラバース道が存在しているとは信じられないほどの急斜面。
すごいところを歩いてきました…。
(初日に雷で避難していたのは右の低部あたり)

農鳥岳からの大展望にはついついテンションが上がってしまいます!
振り向けば塩見岳3052m。去年、残雪期の長距離歩行などで苦戦を強いられた難敵です。さすがのイカツイ山容。
あの山頂で寝袋もなく一晩を過ごした。
農鳥岳から見た塩見岳

南側にはこれから進む縦走路、白峰南嶺。
どこがどこの山かこのときは分かっていなかった。
農鳥岳から望む白峰南嶺

広河内岳は手前の稜線の右側で途切れてしまっている。
左手前が大籠岳、右の茶色くて広いのが白河内岳、
その先に森林限界からちょこんと頭を出しているのが笹山北峰でした。

背後は西農鳥岳。なんかあまり思い入れがないです。夜中に通ってきたところ。
農鳥岳から望む西農鳥岳

改めて南側方面。
手前のゴツゴツしているのがもちろん農鳥岳ですが、最高点はそのあたりか。
画面右上が荒川三山方面で、左右に荒川東岳、荒川中岳、中央は赤石岳か。
農鳥岳から望む南側の景観
あちらにも今年中に挑む予定!


さて、上空に雲がないので風景にあまり変化はないが、
ゆっくり、ゆっくり、太陽が昇ってきます。

太陽の高度、光の変化によって空の色や雰囲気も微妙に変化。
デジタル時代だからこそ、写真は何枚でも撮れる!
ささやかな変化の中で、ベストとなる時間帯は帰ってから分かる。
現地では、ひたすら撮るのみです。
(写真が下手くそな人のやり方です。)

その場では、絶景の雰囲気に圧倒されていて、
どの時間、どの光線状態がベストかなんて、なかなか考えられません。

下段に下りて、手前の稜線を入れた縦構図にも挑戦。
なかなかダイナミックです。ハーフND使用のせいでちょっとわざとらしいかな?
農鳥岳から望む山並みと富士山

下段から農鳥岳山頂を見上げます。登山者が見える。
農鳥岳山頂下段からの景色

下段にはナナカマドの巨大株があり、なんとも気になったので撮影。
しかしデカすぎてなかなか上手く構図に取り入れられません。
農鳥岳のナナカマドの大株

広角と望遠と、いろいろ撮ってそろそろ撮影は一段落か。
太陽が昇ると逆光傾向が強くなり、ガス層が真っ白に輝きます。
農鳥岳から望む山並みと富士山

本当に、安定していて変化のない景色。
ある意味、いつまでも眺めていたい景色。

ところが本日も縦走なのです!
行かなくちゃ!

あんまりのんびりしていると後の工程に余裕がなくなりますよ。
写真家はある意味これも辛い。
撮影時間があるため、行動できない。

かといって、移動をなくして同じ場所で連泊というのも非常に暇で辛い。
ワガママですね(笑)

夜明け前に食べた食事からも時間が経っており、
行動前に少し力をつけようと、フリーズドライのミネストローネを軽く食す。

農鳥小屋の”塩素水”はここで煮沸して消化。

暑さのため直接口にすると、やっぱり塩素が非常にキツイ。
「飲めない水を売るか!」と激怒されたが、この水はぶっちゃけ飲めないレベルである…。

ちょっとトラウマになりそう。
どうしても辛い場合は、一旦煮沸してからボトルに戻すような措置を取ることにしましょう。
今日、この先の行程で得る新鮮な水が今から楽しみ…。


いい加減に出発しましょう。

私が撮影を続ける間、農鳥小屋からやってきた登山者が次々と山頂を通過。
記念撮影をしたり展望を楽しんで、また先へと進んでいきます。
20名位は通過していったでしょうか。
おそらくほとんどのの登山者が、農鳥岳を下りてそのまま大門沢へ下り、奈良田へ至ることでしょう。
私はその先へ行きます。

いよいよ農鳥岳を出発したのは、7時47分のこと。
かれこれ5時間40分ほどもこの山頂で撮影していたことになります。
撮影しているとあっという間。

登山がメインであれば、当然もう少し早く出発したいところですね。
今日の午後の天気もどうなるかわからないし…。

出発すると早速、登山道脇に咲いている小さな花が気になってiPhoneで撮ってみる。
うん、小さくて分からない。
農鳥岳の高山植物と富士山

このような花もまずはiPhoneで撮ってみる。
農鳥岳の植物と富士山

デジカメを出すまでもない、ということでここはスルーする。
iPhoneカメラの有効活用です。手軽で素晴らしいね。

歩き出してわずか5分、出会ったハイマツが気になって今度はデジカメを取り出すことに。
農鳥岳のハイマツと富士山
撮ってみたけど、デジカメを出すまでもなかったかもしれない。

しかしこんな岩場の切り取りも、なかなか悪くないではないですか。
農鳥岳の岩場と富士山

この先、農鳥岳~大門沢降下点までは、ほぼ富士山の大展望が途切れない絶景コースでした。
どこからでも富士山撮影可能、といったところでしょうか。
森林限界を超えていて遮るものはありませんね。

また今日は天気も安定していて、富士山が優しく見守ってくれています。

岩場や、このような「ハイマツのじゅうたん」なども気になってしまい、その都度ザックを下ろしながら進む。
農鳥岳のハイマツのじゅうたんと富士山

ザックを下ろしてはカメラを取り出し、撮影してまたしまい…。

20kgもあるザックを上げたり下ろしたりするだけでそれなりの労力ですよね。
これは上半身、腕のトレーニングにもなっていそうだ。

こんなのもiPhoneで撮影。これこそ、デジカメで撮るべき一枚だったかも…。
農鳥岳の岩場と富士山

ある程度標高を下げてくると、広河内岳もしっかり見えてきた。
8時21分、大門沢降下点手前より望む白峰南嶺です。
農鳥岳から望む広河内岳

来た道を振り返ります。岩がゴロゴロした斜面。
農鳥岳の南側登山道

非常に眺めの良いポイント。農鳥岳山頂より開けていると思います。
農鳥岳登山道より富士山を望む

いよいよ下に見える広々したところが最低部、大門沢降下点でしょう。
もう広河内岳より標高は下ですね。自分が下がったぶんだけ、広河内岳の高さが際立ちます。
広河内岳と登山道

ガレの登山道とその向こうに富士山。なんだか面白い構図。
農鳥岳登山道と富士山

登山道にパックマンがいた!ここを通れば、いつも迎えてくれるかもしれない。
パックマン型の石。

そして大門沢降下点に到着!
8時48分と、農鳥岳出発からちょうど1時間でした。
(コースタイムでは40分)

何やら黄色い小さな塔のようなもの。
大門沢降下点の鐘

どうやら鐘が付いていて、風が吹くと音が鳴るよう。
さきほど、誰もいないはずの山から変な音が聞こえた気がしたのは、これだったようだ。

あたりは先ほどの写真からも分かるように、平坦で広々としている。
悪天時などは重要なこの分岐箇所を音で知らせてくれるということのようです。
視界が悪いとき=ある程度風があるという想定の元でしょうか。賢いね。

標識には漢字で「大門沢」とカタカナで「ヒロゴウチ」と書かれています。

下にザックがデポしてあり、ここから広河内岳をおそらくピストンしている登山者がいるのでしょう。

あたりはペンキでいくつかマーキングあり。
大門沢降下点付近のペンキマーク

いつかここも通ることになるだろうと、ルート入り口から大門沢方面を覗く。
大門沢降下点の登山道


さあいよいよここからが今回の大縦走の最重要コースとも言えるところです。
ここから先は山小屋などは一切なしの大自然です。

そしてキーとなるのが水場。
暑さも厳しい中、この時点で水は1.5Lほどしか残されていません。
この残量であと1日の行程を過ごすのは間違いなく、不可能。

水場はルート上にはなく、廃道を下って取りに行く必要があります。
地図上にも道が記されておらず、ネットで見た情報を頼りに行く予定。

場所は広河内岳を過ぎて少し下ったところから、標高差300mを下りたあたりらしい。
そして道はハイマツが伸びて塞がれているとのことで、かなり険しいことが予想される。
行くだけで一苦労の水場であることは間違いない。

地図にもない道、地図にない水場。
これはある程度のトラブルも想定しないといけません。

水が枯れている可能性もあるし、迷って辿りつけない場合もある。

そうなった場合は、水の残量は限りなくゼロに近づくことは間違いないが、
もう一度広河内岳を経由してここまで戻り、大門沢へ下るしかないということ。

最も近く、最も確実な水場であり、下山道となる。

最悪のケースは想定した。
「もし水が取れなかったら大門沢へ下ってそのまま下山とする」。

この決断を持って、いよいよ人も踏み入れぬ「白峰南嶺」エリアへと突入することとします。


長くなってきましたので、4日目は一旦ここで区切ります。

4日目後半の撮影記へと続きます。

この日の撮影記

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